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先輩のショーツを穿いて一日を過ごした桃恵のクロッチの裏側とは。
「すごーい! 先輩、ぶっちぎりのニューレコードです」
山の中のマラソンコースへと走り出していった女子たちの背中を見送ってしばらくの時が過ぎ……、
一番最初にゴールに帰ってきたのは、桃恵が思ったとおりやはり星那だった。
それも、いつもよりも段違いでタイムがいい。
「はい、先輩、タオルですっ」
「ああ、サンキュな。で、そんなにタイムいいのか?」
「もう凄いですよ。2時間20分22秒です。非公式とはいえ、先輩、早すぎです!」
「ははっ。そいつは凄いな。もうちょっとで世界記録に手が届きそうじゃねえか」
「このペースを維持できれば、本当に世界に手が届きそう……」
「なに言ってるんだよ。このペースを維持? オレはそんなんじゃ物足りねえぜ」
ふう、
汗を拭い、ゆっくり歩いてクールダウンしていた星那は、深い吐息をつく。
だけどその横顔は満足感というよりも、憂いを感じるものだった。こんなにもいいタイムをたたき出したというのに。
星那はただ、抜けるように青い空を見つめている。
遙か彼方の青空から、夏の涼風が駆け抜けていく。
星那の瞳には、この青空の先にある世界が映っているようにみえて――。
なによりも、この風は世界を駆け巡っている。
星那なら、風に乗って世界の果てまで駆け抜けていくことができるだろう。
そしてやがて桃恵の届かないところに行ってしまうに違いなかった。
(私なんて、先輩にとっては風に揺れる木漏れ日……。夜が来れば、どこにあったのかも忘れられてしまう)
桃恵がそんな哀しいことを考えているとも知らず、しかし星那は星那は不意にいたずらっぽい笑みを浮かべるのだった。
真っ白な八重歯が、褐色の肌によく映える。本当に星那は人を戸惑わせる達人がと思う。
そんな星那の笑顔にドキリとしていると、
「桃恵」
「な、なんです?」
出し抜けに正面切って言われて、桃恵は戸惑ってしまう。
やっぱり星那は人を戸惑わせる達人なのだろう。
だけど星那の言葉は、もっと桃恵のことを戸惑わせることになる。
「オレは世界中を駆け抜けたいんだ。だからそのときは、一緒に海を渡ってくれないか?」
「えっ?」
あまりにも唐突なことだったので、桃恵はぽかんと口を開けてしまった。
世界って……アメリカとか、ハワイとか、グアム?
桃恵が戸惑っていても、星那は続ける。
「オレは……。オレはな、日本だけで終わるような人間になりたくないのさ。この風に乗って、世界中を駆け巡りたい。この脚でどこまで走ることができるのか挑戦してえんだ」
「先輩なら……きっと行けると思います、世界の果てに」
「だ、だから……桃恵、そのときは、一緒に海を渡って……、ついてきて、くれるか?」
先輩は珍しく褐色のほほを赤らめて、目を泳がせていた。
普段はイケメンなのに、こういうところは守ってあげたいくらいに愛おしい。
「せ、先輩こそ、私なんかでいいんですか?」
「なに言ってやがる。桃恵じゃなきゃダメなんだ。恥ずかしいこと言われるなよっ」
「せ、先輩さえよければ……っ。私はどこにだってついていきますよっ。一緒に世界、目指しましょう!」
「よし! そうと決まったら、オレがお前を世界に連れてってやる! これから長いあいだ迷惑かけちまうかも知れないけど、よろしくな!」
「先輩のためならなんだってしちゃうんですから! これからも改めてよろしくお願いしますねっ!」
「おう、お前に世界のてっぺんから、絶景を見せてやるぜ!」
「はい! 約束、ですっ」
二人のあいだを一陣の夏風が吹き抜けていく。
この風は、きっと青葉が揺れる春の国からきたのだろう。
そして一夏の二人のあいだを通り抜け、イチョウの舞う秋へと向かい、雪国へと世界を巡っていく。
それは二人がまだ見たこともない風景だけど、数年後には二人して並んで見る風景。
この約束は、いつか世界を駆け抜けていくことになる、たった二人だけが知ってる誓い――。
☆
(今日はとてもいいことがありました。憧れの先輩と、とっても大事な約束を交わしたんです)
夢じゃ、ないんだよね?
すでに日はとっぷりと暮れて、山の稜線からは早くも夕闇が迫ってきている。
桃恵は、ぼんやりとしながらも、練習の後片付けを進めていた。
電子ジャーみたいに大きな水筒や紙コップを片付けて、あとはカラーコーンをグラウンドの隅っこにある倉庫に元通りに戻したら今日のマネージャーとしてのお仕事はお終いだ。
夕飯は別の子が担当だし。
だけど、このカラーコーンというのが厄介者で、桃恵の力では一度に数個ずつしか持てないから、何度も倉庫を往復することになってしまう。
「ふう……、あともう三回くらいで終わる、かな?」
とは言っても、倉庫の近くにあるコーンから片付けていってるから、もう遠くのコーンしか残っていないのだけど。
「私も先輩みたいに力持ちだったらなー」
そんなことを呟きながらも倉庫の片隅にコーンを置くと、
「誰が力持ちだって?」
夕闇を背負って倉庫の出入り口に立っていたのは、八重歯を覗かせている星那だった。
両手にはたくさんのコーンを重ねて、抱え込んでいる。
「ほらよ。全部持ってきてやったぞ」
「あ、ありがとうございます。さすが先輩、力持ちです♪」
「ふふ、褒めてくれるなよ。……どっこらしょ、と」
星那はやや親父臭いかけ声とともにコーンを地面に置くと、パンパン、手をはたいてみせる。
「さてと、さっさと風呂に入ろうぜ。今日は暑かったからいっぱい汗かいちまったぞ」
「は、はい……っ」
お風呂と聞いて、桃恵はドキリとしてしまう。
今日はずっと星那のローライズショーツを穿いていた。一杯汗だってかいたし、それに星那のショーツを穿いていると実感するたびにジュワリと秘筋を熱く濡らしてしまった。
きっとショーツは大変なことになっているだろう。
それを星那に見られるのは、さすがに恥ずかしい気がした。
「なーに真っ赤になってるんだ? ははぁ、まさか……」
「んっ」
桃恵は小動物のように身体を小さく丸めてしまう。
ブルマのなかに星那の指先が潜り込んで来たかと思ったら、敏感な部分に食い込んできたのだ。
「ふふ、こんなに熱くなってたのか。桃恵は大人しい顔してエロエロだな♪」
「だ、だって……、先輩のこと考えてたから」
「オレのことを考えてムラムラしてくれるなんて嬉しいこと言ってくれるじゃねえか」
「あっ、あん!」
キュンッ、
星那の指先が食い込んでくると、桃恵は切なげに縦筋を震わせてしまう。
ただでさえ蒸れているブルマのなかが、更なる熱気に満たされていった。
「こんなにヌルヌルなのか。こいつは風呂よりもベッドが先の方がいいかもな」
「べ、ベッド……!?」
「風呂に入る手間さえも惜しいくらいに熱くなるときってのは、本当にあるもんなんだな」
「せ、先輩も……?」
「そいつは見てのお楽しみってやつだ。いまから医務室のベッドで身体検査といこうか♪」
「は、はい……」
先輩と二人きりでベッド――。
それがなにを意味するのか、桃恵にだってわかる。
自然と胸の鼓動が高まり、身体が熱くなってきてしまう。
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